うえにょっき

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『TPPがビジネス、暮らしをこう変える』感想

 

TPPがビジネス、暮らしをこう変える

TPPがビジネス、暮らしをこう変える

 

 TPPについて非常に簡潔にまとまった本。

その他の評価の高いTPP本でも同様だが、一番の問題は、アメリカがTPPを抜ける前に書かれていること。

アメリカほどの巨人が参加するかしないかは、(当たり前だが)経済的にインパクトの大きさが非常に異なり、本で触れられている内容もかなり変わってくる。

とはいえ、アメリカなしのTPP11も、アメリカが積極的に推し進めていた項目を凍結とし、締結に向けて合意が進んでいるようである。

凍結とは、アメリカが参加するまでの保留事項程度の意味だ。アメリカが参加すれば解凍される。

アメリカが撤退を表明した当初は、かなりの項目が凍結されることが懸念されたが、17年11月の大筋合意では、20項目とまずまず抑えられている。

そのため、アメリカが抜けた現在でも非常に参考にはなる内容である。

 

 

以下、TPP周りで気がついた、勉強になったこと。

  • 中国に先んじて統一ルールを作ることが日米の狙いだった。
  • ルールベースの貿易協定や経済連携協定は、政情の不安定さに対して頑健である。そのため、長期で見ると経済的な安定が保たれる。
  • TPP域外との輸出入が多いものはTPPがあろうとなかろうと関係ない。
  • 2国間協議では、パワーバランスに左右されがち。その点、これまでアメリカがルールベースの地域協定を進めてきたことは、ある意味では評価できる。もちろん、2国間協議はめんどくさく、多国間協定を自国の好きなようにできる方がコスパがいいという考えもあるだろうが。