うえにょっき

噺はまくらが一番大事

Facebookは信用経済圏を作り出せばよかったのにというお話

Facebookが流行り始めたときとき、

ぼくは非常に住みにくい世の中がやってくると思った。

 

実名で自分や他人の行動を世間に晒すような世の中になれば、

ズルや浮気などの全ての悪いことができなくなってしまうのではないか。

ちょっとでも浮名を流そうものなら、ぼくのFacebookにはいろんな写真がタグ付けされて、

「この男はゲス男です。お気をつけください。」

などとコメントされてしまう。

(例えばのオハナシ。)

 

当時高校生だったぼくは、

Facebookが、この先ぼくから奪うであろう甘美な罪の味に想いを馳せながら、

恐怖で夜も眠れなかったことを今でも覚えている。

 

かつての文豪たちのように、世を厭うて山奥でひっそり暮らすしかないのか?

とかくに人の世は住みにくい。

住みにくいぞ人の世!

 

 

 

だが、現実は、そうはならなかった。

 

 

 

Facebookは想像したほど、現実世界に染み出しては来なかった。

もちろん実被害を被った人も少しはいただろう。

たが、SNSで炎上して素顔や本名を晒される事件が注目されるのは、

多くの人は炎上もせずに平穏に暮らしているからだ。

 

 

Facebookは、

人々をオープンすることで、オンライン上のやり取りをより信用に足るものに近づけたかもしれない。

だが、思ったほどにはオフラインの人々の繋がりを生み出すことはできなかった。


 

なぜなら、Facebookはオンラインの経済活動や人々の交流を積極的には生み出さなかったからだ。

会社としても、広告を収益の主体とし、

経済活動がオンライン上で完結してしまった。

 

 

確かに、

ぼくらは、インターネットやSNSのおかげで世界中の人々と繋がれるようにはなった。

でも、だから一体なんだと言うのだろう。

 

SNS上で繋がったインドの友だちを尋ねて、ムンバイの街をガイドしてもらった人がどれだけいるだろう?

SNSで意気投合したブラジルの女の子が欲しがっていた日本限定のワンピースを送ってあげた人がどれだけいるだろう?

 

 

むしろ、21世紀のIT化の流れの中で、世界は、より分断されたようにさえ思える。

 

 

Facebookは、信用できるオンライン交流プラットフォームをかつてない規模で生み出した。

そして、そのオンライン経済圏から莫大な利益を得た。

 

でも、たったそれだけだった。

ぼくとロシアのエカチェリーナちゃんが、現実世界で、物や行為のやり取りすることはなかった。

そして、ぼくが現実世界で行ったあんなことやこんなこと(してないよ?)が、

Facebookに書き込まれる世界はついぞやって来なかった

 

 

 

 

そこで登場したのが、シェアリングエコノミーであり、C to Cサービスだ。

ITの力を使い、オフラインでの人々の交流や、サービス・物のやり取りを生み出した。

車のUber、自転車のmobikeやofo、そしてフリマのメルカリ。

 

www.nikkei.com

 

これまで、IT界の天才たちが、こぞってオフライン / リアルの人々の交流を生み出そうとして失敗してきた。

それを、彼らC to Cサービス企業が、いとも簡単に生み出せたのは、

人々の間にウィンウィンの経済活動が作り出されたからだろう。

 

 

誰かにとって暇な時間やいらない物は、

他の誰かにとっては、お金を出してでも買いたいものになる。

そこに目をつけた彼らは、瞬く間に人と人とを繋げ、とんでもない規模の経済圏を作り上げようとしてる。

このリアルな世界で。

 

 

 

  

その結果何が起こるのか。

そう、人々の信用が可視化される世界が来る。

嘘でもつこうものなら、それがすぐさま情報として反映されて、誰もその人とやり取りをしたくなくなる。

 

wedge.ismedia.jp

 

アリババが提供する、

ネットショッピングやモバイル決済の支払い状況を信用スコアとして可視化するサービスは、

中国ではとてつもない普及を見せている。

 

WeChatのテンセントも、信用スコアを可視化するサービスに乗り出そうとしている。

(うまくいってないらしいが)

www.afpbb.com

 

 

信用スコアの高い人はいろんなサービスを有利に受けられるだけではなく、

出国審査を簡略化出来たりさえする。

逆に、信用スコアの低い人は、交通機関の利用に制限がかかったりする。

中国は、国家として、企業が算定する信用スコアの利用を進めようとしてるのだ。

 

 

そして、アリババとテンセントは、

C to Cサービスを足掛かりとして、オフラインの経済圏にも攻勢を強めている。

 

www.nikkei.com
www.nikkei.com

 

決済情報だけではなく、

現実世界での人々のやり取りでさえ、信用スコアに反映される。 

悪事を働いたものは、その後の生活に様々な支障をきたす。

 

 

便利だが、大変恐ろしい社会である。

 

 

日本でも、

メルカリが、フリマ以外のC to Cサービスを展開すると同時に、

決済サービス・メルペイを展開し始める。

www.nikkei.com

mercan.mercari.com

 

 

 

メルカリがその先に見据えるものは当然、

信用スコアや個人の取引データを基盤とした大経済圏の構築だ。

 

newspicks.com

 

 

メルカリは、C to Cサービスでの取引を自社の決済サービスで行わせることで、

信用スコアを算定する。

そのスコアを他社にも提供することで、信用経済時代のプラットフォームになろうとしている。

 

メルカリで強引な取引をして運営に通報された人には、悪人のタグが付けられる。

当然、その後のサービスは受け難くなる。

メルカリのサービスだけではない。

他の企業のサービスである。

 

メルカリで売ったバッグの写真を加工して、ちょっと汚れを目立たなくしただけなのに?え?

 

 

  

このように監視された世の中に息苦しさを感じる人は、決してぼくだけではあるまい。

 

 

 

念のため言っておくが、

ぼくは、信用経済のコンセプトには、基本的には大賛成だ。

生活の利便性の上昇幅があまりにも大きい。

そして何より、今の資本主義のあり方には納得できない部分が多々ある。

資本を持つものだけが、さらなる資本を手に入れられるゲーム。

資本を持つ悪人が、資本を持たない善良な市民を虐げることができる世界。

これが本当にいい世界だろうか?

やはり、善良に生きてる人が、正当に評価されるべきだと思う。

 

 

メルカリは大好きだし、

訪れるたびに中国のAlipayやWeChat Payの便利さには驚愕している。

(一度大学のプログラムでメルカリの社内見学に伺い、経営陣と議論する機会をいただいた。非常に刺激的な機会だったし、社内も活気にあふれていて大好きになった。)

 

 

 

だが、人間は弱い生き物だ。

誰だって過ちは犯すし、不正もしたくなる。

本人は悪いことしてるつもりはなくても、誰かを傷つけてしまうこともある。

 

例えば、犯罪率の高い地域で生まれ育った子どもたちは、

一般の価値観からすれば良くないことをしてしまうことがあるかもしれない。

そのような人々には、浮上のチャンスは一切与えられないのか?

善悪の価値観は環境に左右されるのに、それを1つの定規で測ってしまうのか?

 

 

基本的には信用評価バンザイだが、

悪事を働いてしまった人にも再起のチャンスを与えることや、

出来心でつい犯してしまった過ちには、情状酌量の余地を残す仕組みを入れ込んで欲しい。

そして、ぼくにもたま〜には悪いことをさせてほしい。笑

 

 

 

 

C to Cサービスによって、

この現実世界がもっと滑らかに繋がれば、私たちはとてつもない利便性を手に入れられる。

信用評価の流れも、もはや止まることはないだろう。

だからこそ、私たち全員が、

本当に住みやすい世界とサービスを作り上げることに参加しなければならない。

 

 

 

最後は、このことわざで締めくくりたい。

「罪を憎んで人を憎まず」

 

もとは、

古之聴訟者、悪其意、不悪其人

(昔の裁判所では訴訟を取り裁くとき、罪人の心情は憎んだが人そのものは憎まなかった)

罪を憎んで人を憎まず - 故事ことわざ辞典

 

漢文だからもうお分かりだろう。笑

そう、かの地が生んだ偉大な思想家・孔子のありがた〜いお言葉。